指導教官から博士課程進学を強く勧められたけどどうしたらいいの?
こんなに期待してくれるってことは自分には見込みがあるのかな!?
指導教官はどういう心理で進学を進めているんだろう?
本記事では上記の疑問に答えます。
本記事の内容
- 進学を勧められた時に考えておいた方が良いこと6選
- 勧められたからという理由で博士課程進学を決めると地獄を見る
指導教官に何度も博士進学を勧められましたが不動の意志で断り、現在は大手企業で研究しているくりぷとバイオ(@cryptobiotech)と申します。
指導教官から「お前、博士課程行くよな?」と言われたことが、この記事を読んでいるあなたにもあるのではないでしょうか?
「お前なら博士課程に行っても絶対にやっていける」
「就職なんてしたら研究ができなくなってしまうかもしれないぞ」
「博士課程に進めば研究職に就ける可能性もグンと上がるから、とりあえず博士課程に行ってから就職を考えればいい」
などなど…。
その指導教官からのお言葉を受け、
もしかして自分って研究の才能がある?
もしかして指導教官から期待されている!?
と心の中で思った人もいるのでは?
今回の記事では「指導教官から進学を勧められた際に考えるべきこと」に関して、僕が当時考えていたことをまとめます。
この記事を読めば、
- 「指導教官はそういう意味で進学を勧めていたのか!」
- 「博士課程に進むためにはそういうことを考える必要があるのか…」
と、博士課程進学に関する理解が深まりますよ。
2018/12/1追記
当記事は「アカリク アドベントカレンダー2018」に掲載されました。
リンクURL:https://adventcalendar.acaric.jp
目次
指導教官(教授)から博士課程進学を勧められた時に考えておいた方が良いこと6選
指導教官から進学を勧められた際に考えておくべきは以下の6つです。
- 研究室のテーマは世間的に見てホットか?
- 指導教官は“自分にとって”信頼できる人か?
- 学生が博士課程に進学する文化がある研究室か?
- あなたは本当に博士課程に進学したいのか?(それは自分の意志か?)
- 自分の研究者としての能力を正しく自己評価できているか?
- 就職した先輩に話を聞いたことがあるか?
順々に説明していきますね。
研究室のテーマは世間的に見てホットか?
「研究室で現在やっているテーマが世界の最先端を走っているか?」は非常に重要です。
例えば「遺伝子編集」の分野なら、今のホットワードはCRISPR-Cas9でしょう。
遺伝子編集を専門とする研究室がこの技術を全く触れずに研究を行っていたとしたら、「え、CRISPR使ってないの?」と世間から思われてしまうかもしれません。
昨今のNature, Cell, Scienceを見ると毎週・毎月CRISPR関連の記事が出版されています。
TALENとかZFNなど他の編集技術が時代遅れというつもりは毛頭ありませんが、世間の流れは間違いなくCRISPRです。
「こんな研究、企業だったらお金出して一瞬でやっちゃうよ…」
「今からその研究して、どんな新しい知見が得られるの…?」
「もう他の研究室が先にやっているよ…」
「この研究室は時代から取り残されている…!」
とあなたが心の中で少しでも思っているなら、個人的にはその研究室で博士進学することはオススメしません。
その研究室が行うテーマは世界的に見てもちゃんと新規性・先駆性があるのか?
それが確信できないと、せっかくその研究室で博士課程に進学しても後悔することになるかもしれません。
指導教官は自分にとって信頼できる人か?
- 周りが「あの先生は良い人!」と聞くから大丈夫!
- 自分の話を親身になって聞いてくれるから大丈夫!
- いつも研究指導してくれるから大丈夫!
そう思っているあなた、要注意です。
優しい指導教官の中には「博士課程に進んだ瞬間に変貌する人」がいます。
博士進学した友人から聞いた話ですが、修士の頃は非常に優しかったのに博士課程に進学した途端、
「自分の意志で進学したんだろ?人に甘えないで一人で研究を進めろ!だが研究室の雑務もやりながらな。」
とハシゴを急にはずされたことがあるとか。
ちなみに、なぜ変貌するかというと「博士課程に進ませるために優しい姿を演じていた可能性があるから」です。
研究室内の学生が博士課程に進学すると、その研究室は国から一定額の研究費が支給されるという事実はご存知ですか?
日本学術振興会のサイトによると、その学生が仮に特別研究員(DC)に認定されたら、年間150万円以内の研究費が支給されます。
つまり学生が博士課程に進めば進むほど、その研究室は研究費が増えるかもしれないわけです。
しかも「博士課程の学生」という大変貴重な労働力も手に入れることができます。
さらにDCは研究室の功績にカウントできるし、その学生たちの成果で研究室はさらに名を馳せる。
あなたの指導教官はいかがでしょうか?
本当にあなたの将来を想って進学を提案してくれていますか?
信頼に足る指導教官だと、あなたは断言できますか?
断言できないのであれば、少なくともその研究室で博士進学するのは危険だと考えます。
博士課程進学の学生が多い研究室か?
博士進学するなら、博士課程の先輩が何人もいる研究室を選ぶのがベター。
良い研究室というのは、毎年1~2名が継続して博士課程に進学しています。
その研究室では素晴らしいことに、博士課程の学生が学士・修士課程の学生を指導する環境が整っています。
修士の学生も博士課程に進学している先輩たちの姿を日々見ているので、博士課程に進学するイメージが掴みやすい。
そして博士課程の先輩に指導されたという経験があるから、自分も博士課程になったら後輩に指導してあげよう!という良い流れの連鎖ができます。
一方、博士課程が全然いない研究室で進学を決断するのは危険。
博士課程1年になった瞬間に、自分がその研究室の学生では最年長になるためです。
自分の研究もしないといけないのに、当然後輩の面倒もほぼ全て任される。
忙しくて後輩の面倒が見れなくなってくると、「あの先輩は全然指導してくれない!」と後輩から牙を向かれる可能性も。
さらに後輩はあなたに対して憧れを抱かなくなるので、なおさら博士課程を志す学生は減るという悪い流れの連鎖に。
自分が博士進学する予定の研究室には博士課程の先輩が多くいて、かつ指導教育の文化があるか?
進学前に今一度しっかり調べてみましょう!
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あなたは本当に博士課程に進学したいのか?(それは自分の意志か?)
- あんなに自分を応援してくれる/期待してくれる指導教官を無下にはできない…。
- 就活が上手くいかなかったから博士課程にとりあえず進むか…。
博士課程に進む理由もないまま適当に進学したら、博士課程を前提として考えている同世代の学生に絶対勝てません。
心を折られて、博士課程を辞めて就職もできないという結果になる可能性が高い。
意志なき決断は、地獄に落ちます。
しかも「誰かが言ったから」を理由にしている時点で他力本願になっています。
もしうまくいかなかった場合に責任転嫁するという最悪な事態になりかねません。
お気持ちはわかりますが、周りから見ていてこんなに恥ずかしいことはないです。
決断の先にある「結果」はどんなものであれ自己責任です。
博士課程進学も同じで、進むなら自己責任。
「本当に自分は進学したいのか?」と自分自身に問いかけてみましょう!
もし進学したいと思うなら、それはなぜですか?
その「なぜ?」に他人が入ってきているのであれば、進学は再考した方が良いでしょう。
研究者としての能力を正しく自己評価できているか?
あなたは自分の研究者としての能力を客観的に評価できていますか?
研究の道で生きていく!と決めたならもう年齢は関係ありません。
スポーツや芸術と同じ、研究も単純な実力社会です。
その実力社会で大切なことは「自分の現状を正確に把握し、それを少しずつ改善していくこと」だと僕は思っています。
あと自分のライバルになる存在を自覚しておくのも大事。
- あなたの研究分野のライバルは誰ですか?
- どこの研究室がその分野の最先端を走っていますか?
- どうやったら差別化できる研究になりますか?
などなど…
博士課程に進むのであれば、競合はしっかりリサーチしておきましょう!
それは億劫だ…と思ったあなた、博士課程に進学して本当に大丈夫ですか?
研究の世界は想像以上に熾烈な世界です。
勝負の世界でライバルを知らないというのは非常に厳しいため、それはもう一度進学を再考すべき!
就職した先輩に話を聞いたことがあるか?
博士進学を決断する前に、研究室OBや企業研究職の方とお話する機会は絶対につくっておくべき。
なぜなら博士卒でなくても、企業でがっつり基礎研究ができるから。
それを自覚していれば修士で研究職の扉を叩くことができるかもしれません。
僕は研究室時代でも楽しく研究できていましたが、なかなかの激務研究室で「これはいつか肉体が崩壊する」といつも思っていました。
もっと人間らしい生活をしながら研究したいと考えた時、研究費と人員が豊富な場所に行けばいいんだ!と悟り、結果僕が辿り着いた答えは「大手企業の研究職」でした。
企業では社内のしがらみも色々ありますが、入社したばかりの僕が数百万クラスの研究委託をポーンとさせてもらえたりします。
- 博士課程に進学しないと研究ができなくなる
- 企業研究はモノづくりで、アカデミアのような基礎研究はできない
と指導教官はおっしゃるかもしれませんが、その指導教官が企業研究をしたことがあるのかを調べてみてください。
もし指導教官に企業経験がなかったとしたら、他者からの情報で判断している可能性が高い。
その場合は要注意です。
あと、あなたの研究室から企業の研究職・研究開発職に就職した先輩が必ずいるはずです。
そういった先輩にじっくり話を聞いてもらってから、博士進学に関して決断するでも全く遅くないと思いますよ!
なおOB訪問で企業研究者に直接相談するのもめちゃくちゃ有効な戦略だと思います。
今なら有用なOB訪問サイトもたくさんあるので全力で活用すべき。
下記記事に有用なOB訪問サイト・サービスをまとめておりますので、進路相談をしたいというあなたはぜひご覧ください。
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勧められたからという理由で博士課程進学を決めると地獄を見る
指導教官が学生に博士課程を勧める理由は色々あります。
- その学生の将来のため
- 研究室運営のため
- 研究費のため
- 研究室の実績づくりのため
などなど、理由は1つではありません。
指導教官は必ずしもあなたのことを想って博士課程を勧めているわけではないという可能性を考慮しておくことは、自分の将来を冷静に考えるために重要です。
研究をしたいから博士課程に進むという選択肢は決して間違っていません。
が、修士卒でも企業で研究はできるので、興味がある方はぜひ企業にも目を向けてみてくださいね!
というわけで当記事は以上です。
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ではではっ
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