企業で研究職に就きたいんだけど、企業って論文書けるの?
噂では特許は書けるけど、論文は書けないとか…。
企業研究職の人から話を聞きたいです。
当記事では上記の疑問にお応えします。
本記事の内容
- 企業で論文を書けるケース5選
- 企業で論文を書くには“強い意志”が必要【出しても特に褒められない】
大学を修士課程で卒業後、企業で日々研究に取り組んでいるくりぷとバイオ(@cryptobiotech)と申します。
学部4年から今まで(2019年6月現在)で、運良く論文を4本(共著含む)出すことに成功しています。
当記事では「企業でも論文は書けるの?」ということを解説していきますね。
結論を先にお伝えしておくと、企業でも論文は普通に書けます。
やっぱり研究者として企業の門を叩くのであれば、特許だけでなく論文もコンスタントに書き続けたいですよね。
数分で読み終わりますし、企業研究者のイメージがわかるかと思いますので是非ともどうぞ!
目次
企業で論文を書けるケース5選
僕が企業に入ってから感じた「企業で論文を書けるケース」は以下の5つです。
- 企業独自に良いもの(化合物、メカニズム)を発見した時
- 企業での製品化に繋がる成分の安全性を確認した時
- 自社製品の素材が別用途で使えることがわかった時
- 企業ーアカデミアの共同研究成果を論文にまとめる時
- 社内でプロジェクトが終了した案件を論文にまとめる時
順々に説明していきますね。
企業独自に良いもの(化合物、メカニズム)を発見した時
自社で取り組んでいる研究で良いもの(化合物、メカニズムなど)が発見された時は、当然論文化の話が出ます。
なぜなら論文化することによって社外にその発見を示せると共に、見出した成果に“権威性”が付与されるから。
例えばある食品企業が、製品Aから腸内環境を整える新規成分を発見して論文を出すとかですね。
自社で見出された成分の有効性を示すには特許でも良いのですが、論文は“査読”があるので内容により“権威性”が付与されます。
また他社に先駆けて論文化することで、自社独自の発見だということをより社外に示すことができます。
新発見というのはアカデミア・企業問わずに論文化されるべき立派な成果です。
このケースは論文化まで比較的スムーズに行きます。
「業務中に書いていいよ」となる可能性も高いですね。
企業での製品化に繋がる成分の安全性を確認する時
新発見とは違いますが、製品化する成分の“安全性情報”を論文化することは非常に重要です。
なぜなら「この製品は安全です」と示すための根拠として活用できるから。
例としてわかりやすいのは「医薬品」ですよね。
医薬品で安全性を確認しないのはありえないですし、医薬品の安全性を確認した論文は以下のようにたくさんあります。
あとは食品業界でいう「食品添加物」の安全性とかですね。
例えば2016年に出版された下記論文は、甘味料スクラロースの発がん性に関してまとめた論文。
この論文では「1日予想摂取レベルよりも数桁量多く摂取しても発がん性を示さない」と報告されています。
というわけで自社製品や素材・成分の安全性を示す際にも論文が書けます。
自分がその安全性を評価する担当であればファースト論文にもなるので、安全性部門は論文数を増やすなら中々おすすめです。
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自社製品の素材が別用途で使えることがわかった時
自社製品・成分がこれまでに知らない効果を持っていた場合も論文が書けます。
これは前項の「新発見をした場合」と似た理由でして、自社製品の優位性や新規性を示すためですね。
わかりやすい例を挙げると「ドラッグ・リポジショニング」があります。
ドラッグ・リポジショニング
ヒトでの安全性と体内動態が実績によって既に確認されている既存薬か
ら,新たな薬効を見つけ出し,実用化につなげていこうという研究手法
具体的には、胎児催奇形性のため販売中止となった睡眠導入剤サリドマイドが、多発性骨髄腫の治療薬として用いられたりしています。
また、勃起不全治療薬のバイアグラは狭心症治療薬としても活用されていますね。
このケースも新発見と同義なので、特許出願したら論文執筆できる可能性が高いです。
企業ーアカデミアの共同研究成果を論文にまとめる時
大学との共同研究は論文になる可能性が極めて高いです。
一番確実に論文化できるケースと言っても過言ではないです。
なぜなら大学は「論文化」が1つのゴールだから。
企業だと「特許化」できれば製品化まで持っていけるので、実のところ論文を書かないケースも普通にあります。
ただ大学側からしたら「論文化」しないのはあり得ないですよね。
せっかく時間とお金と人を費やしたのだから、成果を論文化して業績に反映させたいに決まっています。
その代わりその条件に見合うよう共同研究費を高くしたりなど、共同研究は契約の柔軟性が高いですね。
ちなみに余談ですが、大学との共同研究成果で論文書く→そのままの流れでPh.Dも取るという人は企業でけっこういます。
修士卒で研究職に就いた人は、共同研究をうまく組めればPh.Dを取れる確率が間違いなく上がりますよ。
ぜひ自分で新規研究テーマを創って、かつ共同研究先候補も提案してみてくださいね。
社内でプロジェクトが終了した案件を論文にまとめる時
社内プロジェクトが終了した後に、今までやってきた研究成果を論文化するケースがあります。
これは製品化がうまくいったケースでも、逆に研究開発が途中で中断したケースでもあり得ます。
例えば企業で新しい発見をし、その発見から新製品をつくるとします。
でも何をやっても製品コストが利益に見合わないという場合、残念ながら開発がストップすることも。
ただ良い成果であることは間違いないし、それを発見した技術力の高さを社外に示すことは可能ですよね。
それゆえプロジェクトは中断になっても論文は書ける(場合によっては何報も)という理屈。
「若手研究職で早く論文を書きたいのですがどうしたら?」と問われたら、個人的にはこのケースに恵まれるのが最短と僕は答えます笑
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企業で論文を書くには“強い意志”が必要【出しても特に褒められない】
というわけで企業で論文を書く or 書けるケースについてご説明しました。
ただ一点お伝えしておきたいのは、企業での論文執筆には「絶対に論文を書くぞ」という強い意志が必要です。
なぜなら企業にとって論文は必ずしもmustではなく、特許さえ出すことができれば製品化に移行することが可能だから。
「論文を書くことは許可するけど、業務外で書いてね」
と言われることもザラにあります。
つまり企業で論文を書きたいと思っている人は、土日祝日に「自己研鑚&無償」で書く覚悟が必要。
もちろん「仕事で書け」と言われるケースもあるので、全てが「自己研鑚&無償」とは言いません。
が、その覚悟で臨まないといざ論文を書く時に「めんどくさい」と感じて書けません。
論文は「会社に依存しない自分の業績」になるので、書けるならどんどん書いておくべし。
企業でも継続的に論文を書けるよう、虎視眈々と論文化のチャンスを狙っていきましょう!
そして修士卒は企業の研究成果でPh.Dを取りましょう!
というわけで当記事は以上です。
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ではではっ