企業研究者ってどういったモチベーションで「学会」に参加しているの?
企業研究者が学会に行く際の準備としてやっていることは?
なんで企業研究者は学会発表で控えめなの?
当記事では上記の疑問にお答えします。
本記事の内容
- 企業研究者の学会参加時のモチベーション&心構え
- なぜ企業研究者は控えめな発表しかしないの?
- 企業研究者は学会で熱いトークや議論をしないの?(特に学生と)
大手企業で研究をやっているくりぷとバイオ(@cryptobiotech)と申します。
学会やセミナーに行くのが大好きな研究者です。
先日、Peingで以下の質問をいただきましたので記事にしますね。
もし間違えてたら恐縮ですが学生の方でしょうか?「なぜ企業研究者は学会で熱いトークやディベートをしてくれないのか?」「なぜ企業研究者は学会でコマーシャル程度の発表しかしてくれないのか?」という質問だと解釈しましたが合っておりますでしょうか? #peing #質問箱 https://t.co/o57apsuT1X pic.twitter.com/HFfHtIfMfB
— くりぷとバイオ@研究職×投資家 (@cryptobiotech) March 30, 2018
こちらこそ質問の意図を掴み切れず失礼いたしました。今日明日中には記事にしますね。学生の方にとっては少々厳しい意見になるかなーと思いますが、あくまで一つの意見として捉えていただければ嬉しいです。そこは企業ごとに考え方の違いがあるので…|д゚) #peing #質問箱 https://t.co/hjHaGSjCI9 pic.twitter.com/XY7MKmbCmy
— くりぷとバイオ@研究職×投資家 (@cryptobiotech) March 30, 2018
僕も確かに学生の頃は、以下のようなことを思っていました笑
- 企業研究者さんよ…懇親会ではもっと飲んで熱くならんかい!
- なんで学生が質問した内容を濁して答えるんだ…?印象悪いなー!
- 企業研究者って何のために学会来てるの?
ただ実際に企業研究者になってみてその気持ちがわかったので、あなたにその理由をお伝えしたいと思います。
この記事を読んでもらえれば、企業研究者の心理が理解できます。
2~3分で読めるはずですので、お手すきの際にご一読くださいね。
目次
企業研究者の学会参加時のモチベーション

企業研究者である僕が学会に参加するモチベーションは以下の通りです。
- 学会を通じて新しい繋がりを創りたい
- 自分の研究成果を世の中に知ってもらいたい
- 弊社はこんな研究をしています、とアピールしたい
順々に説明していきます。
学会を通じて新しい繋がりを創りたい

学会はただ自分の研究を発表する場だけでなく、新しい繋がりを創る場でもあります。
それは学生さんだけではなく、企業研究者も同様に考えていることです。
もちろんアカデミアの先生方も同じことを考えているはず。
やはり共同研究の提案などを気軽にお話する際には、学会という場は非常に重要。
企業研究者と言えど、このモチベーションに違いはありません。
自分の研究成果を世の中に知ってもらいたい

自分が企業でやった研究成果について、アカデミアの方々と議論したいというモチベーションで学会に参加しています。
企業研究ではやはり「その成果がどういった製品に繋がるのか?」ということに目を向けがちです。
ですがその成果をアカデミアの方々が見たら、サイエンス視点でより洞察の深い意見が浮かんでくるはず。
企業研究者としては、そういったご意見が非常にありがたいのです。
なぜなら自分がやった成果が企業だけでなく、アカデミアの方々にも興味を持ってもらえているという証明になるから。
あと自分には無い視点からご意見を頂けるというのは、いつになっても新鮮で貴重なものです。
企業研究者も当然、自分の研究成果で世の中を良くしたいと考えております。
そういった想いを発信する場として、学会はやはり貴重ですね。
弊社はこんな研究をしています、とアピールしたい

企業が持つ技術力の高さや、「今はこんなテーマに興味を持っているよ」ということを示すことも学会参加のモチベーションの1つです。
これは別に「弊社の技術は凄いだろ!ドヤッ」と主張したいわけではありませんよ笑
技術力の高さや興味がある研究領域を示すことによって、アカデミアの先生方と共同研究しやすくするのが目的です。
共同研究を締結するためには、アカデミアの先生方に「あそこの企業は良い技術を持っているな!」と認めてもらう必要があります。
そうしなければ一緒に組もうと思っていただけないですからね。
一緒に組む必要がないと思われないためにも、定期的に企業が有する技術力を発信していく必要があります。
それを発信するために学会に行くという企業研究者も多いと思います。
というわけで企業研究者である僕が学会に参加するモチベーションに関してご説明しました。
次項では「企業研究者が学会に参加する前にしていること」について解説しますね。
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企業研究者の学会参加時の心構え

国内外の学会関係なく僕が学会に参加する際には、必ず以下のことをやってから学会に臨みます。
- 学会プログラム配布後、記載されている全ての発表内容に目を通す。
- 自分が興味深いと思った発表にマークをつける。
- 自分が興味深いと思った発表の中から、自分の業務に直結すると感じた発表にさらにマークをつける。
- それらの発表を行う研究室情報を調べる。(論文とか)
- 4.までやって「この発表は聞く価値がある」と思ったら、学会要旨を参考にしながらどんな発表かをある程度把握する。
- 1発表あたり質問を最低でも3個は考える。
- 「この研究室とは共同研究が組むべきだ」と感じた場合、学会前にメールを送り、当日に研究の話をさせていただけないかお願いする。
企業研究者が学会に参加する際には予習をしていて、基本的に「これを聞こう!」と決めた発表にしか興味がありません。
内容を事前に全て見ているので、聞くべき発表を聞き逃してしまうことはめったに無いんですね。
それゆえ企業研究者はフラフラと学会会場をさまよったりすることがないので、近寄りがたい雰囲気があるのかも…笑
学生の皆さんは、学会参加時にどのような心構えで臨まれていますか?
控えめだと思われがちな企業研究者は、「次なる研究の種探し」に全力を懸けてますよ!
学会で企業人に成果をアピールする意義に関してまとめた記事。
こちらも是非ご一読くださいね。
関連記事 学会で成果を企業にアピールする意義は?【企業研究者の視点から】


なぜ企業研究者は学会で控えめな発表しかしないの?

これは企業の機密上どうしようもないことなんです…。
個人的には「もっと踏み込んだ所までディスカッションしたい」という気持ちはあります。
が、秘密保持契約を結んでいない方とは研究の話が深くできないことが多いですね。
機密保持という点では、企業はアカデミアよりもかなり厳しいです。
いじわるで喋らないのではなく、それを喋ったら「機密情報の漏えい」でとんでもない事態になる可能性すらあります。
ですので「なんだよ企業研究者ってケチだな!」と思わないでくださいね…(懇願
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なぜ企業研究者は学会で熱いトークや議論をしないの?(特に学生と)

結論を先に申し上げると、企業研究者も学会で熱いトークやディスカッションをめちゃくちゃしています。
企業研究者は熱い議論を学会でしているのにも関わらず、それを学生が自覚できない理由は以下の通りです。
- 企業研究者にとって学会とは、少なくとも「学生と話す場」ではないから
- 学会で熱いトークを繰り広げるのは、参加目的と合致する時のみだから
1つずつ説明していきますね。
企業研究者にとって学会とは、少なくとも「学生と話す場」ではないから

企業研究者にとって、学会とは「学生と仲良く話す場」ではないと考えます。
仕事で行っているので、学会参加で求められる成果は以下のようなものがあります。
- 当社の研究に活きる最新の研究成果は?
- 当社の研究を推進する上で共同研究が組めそうな研究室は?
- 当社の研究を発表した結果、どんな意見が出たか?
かなり極論になりますが「学生さんとたくさん仲良くなりました」は成果になりません。
もしそれを成果と認識している企業研究者がいたら「この人、大丈夫か…?」と僕は思ってしまいます。
それゆえ企業研究者は自分から学生さんに話しかけるということが少ないはず。
企業研究者とたくさん話したいと思っている学生は、懇親会で話すか企業研究者に良い質問をぶつけるかが必要と考えます。
企業研究者は基本的に「自分から積極的に学生さんと仲良くなる理由と時間が無い」ので、学生側からアタックするのが大事です!
学会で熱いトークを繰り広げるのは、参加目的と合致する時のみだから

前項の通り、企業研究者は下記のような目的と合致する時には積極的に話します。
- 当社の研究に活きる研究を聞いているとき
- 共同研究が組めそうな研究室の人と話せるとき
- 当社の研究を発表しているとき
逆に上記のようなことに該当しなければ、そもそも学生さんは企業研究者と話す機会がないはず。
厳しい言い方ですが、企業研究者と話せる or 話せない学生さんは二極化します。
僕が実際に企業研究者と話せない学生だったので、その時に気付いたことをお伝えすると、研究室のネームバリューは超大事。
超ビッグラボであれば、学生でも企業研究者がたくさん集まるんですよ…。
当時は「いやいや僕の方が絶対良い成果出してるやん」と、本当に悔しい思いをしていました。
自分から積極的に企業研究者の方に話しかけても軒並みノリが悪かったので、ネームバリューって大事なんだなと実感しました。
それゆえ学生さんは企業研究者と熱いディスカッションをすることを目的にしなくてよいと、今では考えています。
むしろそれよりも同世代の研究者と繋がった方がよっぽど有意義。
僕も学会で熱く語り合った同世代の研究者と今でも交友関係にありますし、一生の友人ができるかもしれませんよ。
企業研究者が学会に参加する心理を知っておけば変に良い所を見せようと思わずに済む

というわけで当記事は以上です。
企業研究者は確かに効率を意識しているゆえに、学生さんとお話する時間は少なくなってしまいがち。
でも学生さんから話しかけてくれたら嬉しいと思う面もあるのも事実。
仮にそっけない議論しかできなくても「企業研究者はそんなもんか」と思っておけば気が楽です。
変に良い所見せようとして空回りしてしまうと、僕のようにふてくされてしまう危険性があるのでご注意くださいね。
企業研究者が「学会」をどう捉えているか?
あなたの参考になる情報が提供できていたら嬉しいです!
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ではではっ