論文紹介で炎上したくないんだけど、準備の方法がイマイチわからない。
いつも難なく論文紹介をこなしている先輩たちはどうやって準備しているの?
準備のコツとかあれば教えてください。
当記事では上記の疑問にお答えいたします。
本記事の内容
- 論文紹介で失敗しないために心がける準備のコツ
- 論文紹介は「義務」ではなく「エンターテインメント」
修士課程で大学を卒業後、大手企業で研究しているくりぷとバイオ(@cryptobiotech)と申します。
論文紹介が怖くて震えていた学部4年から少しずつコツを学び、修士1年後半から論文紹介で「面白い!」と指導教官に言わしめることができました。
当記事では研究室イベントの鬼門「論文紹介(雑誌会、ジャーナルクラブ)」に関して準備のコツを解説いたします。
僕も最初から発表が神がかっていたわけではなく、試行錯誤の上、なんとか聴衆を楽しませる発表ができるようになりました。
発表が下手だったからこそ「こうしておくと上手くこなせる」というポイントがあります。
当記事ではその準備やコツについて、惜しみなく解説したいと思います!
当記事のコツを意識してもらえれば、あなたの論文紹介の質をアップさせることができるでしょう。
数分で読み終わりますので、是非ともどうぞ!
目次
論文紹介で失敗しないために心がける準備のコツ
僕は論文紹介で失敗しないために心がけている準備のコツは以下の通り。
- 時間は十分に用意する(最低一か月)
- 発表論文はIntroduction, Material&Method, Result, Discussionを隅々まで“2~3回読む”
- Introductionで引用されている論文の内容をある程度理解する
- スライドはいきなり精巧に作り込まない
- 論文紹介の原稿が不要になるまで発表練習を行う(最低10回)
順々に説明していきますね。
時間は十分に用意する(最低一か月)
僕は初めての論文紹介で盛大にキャンプファイヤー(炎上)した経験から、論文紹介の際は必ず十分な時間を取るようにしました。
具体的には、論文探しからスライド完成までに最低一か月の時間を取ります。
「この人の論文紹介、全然面白くないな…」と思われてしまう大きな原因の1つは、準備時間の不足です。
この記事を読んでいるあなたも経験があるかもしれませんが、自分の論文紹介が近づくまでイマイチやる気が起きない現象のせいです。
そして論文紹介の日が近づくと「ヤバいそろそろ準備しないと」と焦り始める。
でも良い論文が見つからず妥協で論文を決定し、内容を深く理解しないままスライドを作り始める。
そして「わかりやすいスライド」になっているかも確認せず、論文理解も十分でないまま本番を迎える…。
断言しますが「論文選び」から「わかりやすいスライド作り」までを、直前の作業だけで仕上げるのは無理です。
実験も睡眠も娯楽も全て投げ打って論文紹介に時間を捧げても、「面白い!」と聴衆を満足させるレベルに至るのは困難。
もちろん「俺は準備に1週間かからんよ」と言って本当に1週間で成し得てしまう人もごく稀にいますよ。
ただその場合、普段から膨大な論文を読んでいて「これ面白いな。今度の論文紹介候補にしよう」と頭の中で考えていることがほとんど。
学部4年や修士課程の学生が同様のことをやろうとしても、血祭りにあげられるだけなので注意。
論文紹介で失敗しないための最大のコツは「十分な時間を準備すること」です。
発表論文はIntroduction, Material&Method, Result, Discussionを隅々まで“2~3回読む”
発表に使用する論文は、以下のことを理解するために2~3回徹底的に読みます。
<イントロに書いてあること>
- なぜ筆者らはこの研究をやろうとしたのか?
- これまでにどんなことがこの分野でされてきたのか?
- この論文の新規性は何か?
<マテメソに書いてあること>
- どの実験手法を用いて今回の実験結果を導いたのか?
<リザルトに書いてあること>
- 今回の結果から言えることは何か?
- 今回の結果を示すためになぜその実験手法を用いたのか?
<ディスカッションに書いてあること>
- 今回の結果に対する類似の既報結果とその差異は?
- 筆者達が今回の結果で「足りていない」と思っていることは?
- 筆者達が今後やろうとしていることは?
論文紹介は「誰が聞いても面白いと思ってもらえる論文を選ぶ」傾向にあるため、どうしてもトップジャーナル誌が選ばれがちです。
トップジャーナルを一回読んだだけで完璧に理解するのは困難です。
なんとなく内容を理解することならできると思いますが…。
それゆえ僕は論文の内容をしっかり理解するために、発表論文は2~3回隅から隅まで読むようにしています。
「筆者達の気持ちが理解できるくらい読め」というのが先輩の教えでしたので。
Introductionで引用されている論文の内容をある程度理解する
発表論文のイントロに記載されている引用文献は、できる限り目を通すようにしています。
なぜならイントロだけの情報では「これまでにどんな研究がされてきたのか」が理解しにくいから。
例えば以下の論文を例にご説明します。
引用論文:Nature Communications 10, Article number: 2474 (2019)
糖尿病は膵β細胞におけるミトコンドリア代謝の顕著な阻害を引き起こす
この論文のイントロには、以下のような一文があります。
Chronic hyperglycaemia impairs β-cell function(3,4,5,6) and thus may be expected to contribute to the progressive nature of the disease.
「慢性的な高血糖はβ細胞の機能を損なう」的なことが書かれていますが、これをそのままスライドで説明したとしても血祭りにあげられます。
聴衆を納得させるにはこういった細かい部分もしっかり把握しておく必要があります。
それゆえ論文紹介は「選んだ論文だけを読めば良い」だけでなく、その引用文献もある程度理解しておく必要があります。
論文紹介がわかりやすくて面白いと思う人の発表は、こういった部分にもこだわっていましたね。
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スライドはいきなり精巧に作り込まない
論文紹介する時には、いきなりスライドを全力で作りにいかないようにしています。
例えば、あるスライドには「スライド上段に細胞のイラストと測定法の解説文、スライド下段にFig.1の結果、そして結論を示す一文」
ということだけをササッとスライドに記入し、次のスライドを作りにいきます。
そして次のスライドには「スライド上段に実験手法の詳細解説、スライド下段にFig.2B~D結果、そして結論文」とだけ記入し、また次のスライドへ…。
このように、「文だけで構成された超簡易スライド」をまず完成させるのが超重要。
あと僕はこの超簡易スライド作成を終わらせたら、この状態で軽く発表練習します。
自分の脳内イメージでスライドの図を補完しながら、どのように発表するか流れだけ確認する感じですね。
これをすると「あれ、ここの流れおかしいな」と気づくことができるので、簡易スライドを修正できます。
簡易スライドを修正して「よし、これで肉付けしていこう」となって、初めて精巧なスライド作りを開始。
この流れでスライドを作ると、めちゃくちゃスライド作りの効率が上がるのでおすすめ。
全体像を理解せずにスライドを精巧に作成しても、結局最後に修正が入るので時間がもったいないです。
論文紹介の原稿が不要になるまで発表練習を行う(最低10回)
論文紹介用のスライドが作り終わったら、発表練習は必須です。
具体的な回数で言えば、時間を測りながら声を出して発表練習するのを最低10回以上します。
「プレゼンが上手い」と言われる人たちは、間違いなく発表練習をしっかりしています。
あのAppleの創業者スティーブ・ジョブズですら、何週間も前に準備を始め、リハーサルには丸2日かけていたとのこと。
プレゼン力は練習次第でいくらでも身に付く能力ですので、スライドを作りおわったら発表練習も欠かさないようにしましょう!
なお僕がいつも参考にしている下記書籍もプレゼン力を高めるのに役立つので、「プレゼンが上手くなりたい」と思っている方は是非ともどうぞ!
論文紹介は「義務」ではなく「エンターテインメント」である【緊張を楽しめ】
論文紹介で失敗しないために意識している準備のコツに関してご説明しました。
全てのスライド発表に当てはまることですが、発表は「義務」ではなく「エンターテインメント」です。
聴衆にただ発表するだけなら誰でもできますが、楽しませることは全員にできることではありません。
どうやって発表すれば聴衆が楽しめるか?
どんな情報を提供すれば聴衆は納得してくれるか?
どんな話し方・身振り手振りをすれば聴衆の興味を引けるか?
こういったことを意識しながらスライド作成・発表練習すると、自ずとプレゼン力もスライド作成力もアップします。
もし当記事を読んで「ここまで準備に時間かけてない」と思われたのであれば、ぜひこの作業量を超える準備をしてみてください!
僕は凡人なので、多分あなたが僕と全く同じことをすれば、僕よりはるかに早い時間で論文紹介の準備が完了できると思います。
プレゼンで人を楽しませる喜び(快感?)を知ると、スライド作成やプレゼンが楽しくなりますよ。
ぜひあなたも論文紹介で聴衆を楽しませる発表をして、指導教官や先輩・後輩から一目置かれる存在になってくださいね!
というわけで当記事は以上です。
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ではではっ
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