研究でいつも独創性・オリジナリティを発揮しろ!って言われるけど、何それ?
独創性を磨くためには変に論文を読みすぎない方が良いと聞くけど本当?
当記事では上記の疑問にお答えいたします。
本記事の内容
- 論文を読みすぎると独創性やオリジナリティが失われる説は本当か?
- 研究者が独創性やオリジナリティを磨くために必要だと思う要素
こんにちは、くりぷとバイオ(@cryptobiotech)です。
自分の独創性・オリジナリティを追い求めて、はや25年以上が経過しました。(年齢的に)
「論文を読みすぎると自分のオリジナリティが無くなる」って人が過去にいたんですが、それは全くもって勘違いだと思う。
研究は「先人たちが積み上げた知見を利用して、いかに真理を探究するか」ですよ
ノーベル賞獲った人たちですら過去の知見を読み漁ってるのに、我々凡人がやらずにどうする…
当記事では上記ツイートを深堀りしてみようと思います。
上記は僕が大学生時代に、研究キライの知り合いから言われた言葉ですね。
当時はまだまだ未熟者だった(今でもそうですが)ため、確かにそんな考え方もあるかと思っていました。
が、企業研究者として数年経った今、あの言葉は全くもって見当違いだったと確信しています。
当記事はそう思う理由を3つほど解説して、研究の独創性を出すために意識すべきことは何か?を語ります。
3~4分で読めますので、あなたが研究の独創性について少しでも悩んでいるのであれば是非ご一読ください。
あなたの研究モチベーションを高めるのに役立つはずです。
目次
論文を読みすぎると独創性やオリジナリティが失われる説は本当か?
さて、僕が昔言われた「論文を読みすぎると独創性やオリジナリティが失われる説」について。
この説は100%嘘っぱちです。
もしあなたの周りにこんなことを言ってくる先輩がいたら、できるだけ距離を置いた方が無難。
そう思う理由は3つ。
- 普通に考えて論文を読めば読むほど新しいアイデアは閃くから
- 論文を読まないと自分が独創的かどうかを判断できないから
- 世に名を遺す人は「過去(歴史)」から学ぶから
1つずつ解説していきます。
普通に考えて論文を読めば読むほど新しいアイデアは閃くから
考えてみれば当たり前のことなのですが、論文を読めば読むほど新しいアイデアを蓄積されていきます。
なぜなら論文には必ず「新規性」が含まれているから。
論文に書かれている「新規性」を把握すれば、あなたはその論文を読む前にはなかった「知識」を手に入れています。
例えばiPS細胞を知らない研究者がiPS細胞に関する論文を読めば、「生物の細胞は巻き戻すことができる」という知識を手に入れます。
例えばですが、この科学者がもし化粧品企業に勤務していたとすれば?
「ヒトの皮膚細胞を巻き戻して若返らせる化合物が作れるのでは」と思うようになるかもしれません。
このように、論文は「独創的な研究に繋がりうるアイデア」を与えてくれるものです。
間違っても「あなたの独創性を削り取っていくもの」ではありません。
論文を読まないと自分が独創的かどうかを判断できないから
論文をたくさん読まないと、自分のアイデアや研究が独創性に富んでいるかを判断できません。
なぜなら「論文=先人たちの独創性の結晶」であり、それらを知らないとあなたの独創性を説明しようがないからです。
例えばこれはビジネスを考えるとすごくわかりやすい。
「顎の力が弱った高齢者でも食べられる栄養食」をあなたが閃いたとします。
やわらかくて高栄養な食品を作れば売れるはずだとあなたは考え、さっそく商品化まで至った。
さて、これは売れるでしょうか?
結論から言うと多少売れるかもしれませんが、残念ながらこれでは人気製品になる可能性は低い。
なぜならあなたは「競合情報」を調べていないから。
すなわち「すでに同じアイデアで商品化されているものがないか?」「それは売れているか?」を調べていないのです。
仮に、すでに同じアイデアの商品が数年前に出ていてそれらが売れていたら、全く同じコンセプトで出しても売れませんよね。
顧客からしてみたら「え、同じのなら今までのやつ買うよ。新しく変える必要性がないし」となるわけです。
上記のビジネス例のように、研究でも「自分が閃いたアイデアはすでに誰かがやっているのでは?」という視点が超重要。
自分のアイデアの独創性・陳腐性を理解するために論文はあるのです。
多分「論文読んだら独創性が消える」と言っている人たちは、自分のアイデアがすでに誰かにやられているのを知るのが怖いのでは?
自分で閃いたアイデアがすでに陳腐化しているアイデアだったと認めるのは、確かに辛いものがありますもんね。
でもそれを「知る」ことで、あなたの研究時間を節約できたと考えることもできます。
もし知らずにそのアイデアが独創的だと決め込んで、数年研究に没頭していたとしたらゾッとしませんか?
陳腐なアイデアに数年捧げるって悲劇的だと思います。
ゆえに論文は「新しいアイデアを閃かせるツール」であると同時に、「自分のアイデアを正しく否定してくれるツール」でもあります。
「論文を読むと独創性やオリジナリティが失われる」と言っている人たちは、多分論文の有用性を理解していません。
世に名を遺す人は「過去(歴史)」から学ぶから
世の中に名を遺す偉人は、すべからく「過去(歴史)」から学む傾向にあります。
これは初代ドイツ帝国宰相オットー・フォン・ビスマルクの言葉にもある通りです。
愚者は経験から学び、賢者は歴史に学ぶ
引用元:Wikipedia
自分でパッと閃いて行動に移す人は、発想力と行動力で一見優れているように見えるかもしれません。
しかしそれはあくまで「これまで積み上げてきた経験」に基づくもので、本当に優れたものなのかはわかりません。
「自分の独創性」を維持するために論文を読まない人は、まさにビスマルク宰相が定義する「愚者」そのものでは。
自分の経験こそが独創的だと思い込みたいわけですからね。
厳しい言い方ですが「自分の独創性を維持するために論文を読まない」と主張する人は、ただ論文を読むのが嫌いなだけだと思います。
我々もビスマルク宰相の言葉に従って、愚直に過去の歴史(論文)を学ぶべきですね。
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研究者が独創性やオリジナリティを磨くために必要だと思う要素
ということで「独創性を維持するために論文を読まない方が良い説」を否定してみました。
では実際に研究者が独創性やオリジナリティを磨くために必要なことは何でしょうか?
要素を上げればキリがありませんが、あえて絞ったら以下の3つになります。
- 自分の研究テーマの競合を知り、現在の研究内容をウォッチすること
- 「自分が研究をどう進めたいか?」という自立心を持つこと
- 「負け続ける負けず嫌い」になること
順々に説明していきますね。
自分の研究テーマの競合を知り、現在の研究内容をウォッチすること
自分の研究テーマの競合を知り、かつ彼らが現在どんな研究をしているのか知ることは独創性・オリジナリティを磨くために必須。
これはぜひ理系学生や若手研究者に意識してほしい点です。
なぜなら競合がどんなことをしているか知ることによって初めて、他がやっていない研究が見えてくるから。
前項で説明したように、過去を知らずに独創性が高い研究はできません。
独創性どころか「新規性」がある研究すらできません。
何から何まで「既知」で、何から何までが「新規」なのかを説明できないからです。
そして競合を知らないと「今の最先端研究」を知ることができません。
自分のアイデアが「最先端」か「時代遅れ」を判断するために、競合のウォッチは重要。
例えばあなたがiPS細胞から心筋細胞を作りだす研究者だとしたら、知るべき競合情報は以下のようなものですね。
- iPS細胞 → 心筋細胞に分化させるための方法論まとめ
- iPS細胞 → 心筋細胞に分化させるために必要な平均日数
- iPS細胞から分化させた心筋細胞の機能性がどこまで担保されているか
- iPS細胞から分化させた心筋細胞のヒト臨床可能性
こういった情報を調べておかないと、「では自分は今から何に取り組むか?」が決まらないので注意です。
独創性・オリジナリティを磨くためにも、競合の研究内容は常にウォッチし続けましょう。
「自分が研究をどう進めたいか?」という自立心を持つこと
独創性を磨くということはすなわち、「他人が考えていないこと」を進めるということ。
これを進めるには自分で責任を取るぞという「自立心」が不可欠です。
なぜなら研究というものは無数の道が存在し、どの道を進むかは個人の決断に委ねられるからです。
例えば先ほどのiPS細胞から心筋細胞をつくる科学者を例に考えてみます。
iPS細胞から心筋細胞を作るといっても、化合物を探すのか・培養法を探すのかでも異なりますよね。
さらに化合物を探すと言っても、低分子化合物・ペプチド・タンパク質どれを使うのかでもやり方は変わってきます。
良いものが取れればどんな方法でも構わないですが、その方法を事前に、かつ完璧に予測できたら研究は苦労しません。
失敗する可能性も視野に入れながら、トライしなければならないのです。
それには「自分でやるぞ」という自立心が必須。
独創性を磨くということは、不確定な道を進んでいく覚悟を決め、不安でも推し進める意志の強さを持つことだと考えます。
「負け続ける負けず嫌い」になること
これは個人的にいつも意識していることで、独創性を磨くには「負け続ける負けず嫌い」になることが必要です。
独創性のある研究をするには「過去(論文)」を学べという話をしました。
それすなわち「自分のアイデアが世界ですでにやられていないか調べろ」という意味でもあります。
もしそのアイデアがすでに研究されていたら、あなたはアイデア戦争で負けています。
その閃いたアイデアを今からスタートさせるには、かなりの勝算がないと厳しい。
それなら「負け」と自覚して、次なるアイデアを構想した方が100倍良いです。
このように、アイデア戦争で討ち死にしまくることが、独創的な研究のスタートラインかなと考えます。
よくある「ダメ研究者」の特徴として、自分が閃いたアイデアをいつまでも大事に持ち続けるということがあります。
もちろんそれがまだ競合が気づいていない「絶対にいけるアイデア」なら良いですよ。
でも競合がすでにやっていることと被っているアイデアを大事に持ち続けているのであれば、脳内メモリの無駄遣いです。
捨てるか、機密に触れていないのであればSNSで発信して「いいね」をもらえるか試した方がマシです。
下手なプライドを捨てて、自分で閃いたアイデアを片っ端から切り捨てる「武士」になりましょう。
それを何度も続けると、ある日「何度切ってもダメにならないアイデア」が出てきますので。
独創的な発想は、死屍累々に積み上げられた陳腐なアイデアを乗り越えた先にあるものと考えます。
論文、読みましょう!
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研究者にとっての「論文」は、プロ野球選手の「素振り」と同じ【やらなくなったら終わり】
研究者にとっての「論文」は、プロ野球選手にとっての「素振り」のようなものです。
どちらも「プロ」としてやっていくために最低限やらなければならないこと。
これをやらなくなってしまっては、もはやその業界の「プロ」とは言えないと考えます。
論文は自分の発想力を確実に進歩させてくれますし、今ではそれをSNS発信することで「専門性」のアピールにもなります。
SNSで発信すれば思わぬアドバイスをいただけることもありますし、それはアイデアの価値を高めます。
これだけデジタル化した社会で「論文を読まない方が良い」なんて言っていると、多分数年で「使えない研究者」になるのかなと考えます。
恐ろしいスピードで科学は進歩していますからね。
当記事を読んでくださったあなたも、ぜひ論文を継続的に読む習慣を身に付けてみてくださいね。
というわけで当記事は以上です。
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ではではっ