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【論文8】再生医療による毛髪治療が現実になりつつある?

 

50代までに毛髪に関する悩みを抱えている人は、なんと男性では50%, 女性でも25%に上るとのデータがある。現在の毛髪治療の主流は毛髪損失が起こっている部位に毛包を移植することだが、この治療法は当然、増殖可能な毛包が手に入ることが大前提である。近年は毛包幹細胞を用いた新たな治療法が注目されているが、まだ万人が治療を享受できるレベルには到底達していない。

 

読者の方も薄々感じているかもしれないが、幹細胞による毛包再生が実現すれば莫大なビジネスになる。頭髪が日に日に薄くなっていくことを「是」とする方はいるはずがなく、例えばそれが100万円程度で完治(フサフサ化)するのであれば治療は殺到するだろう。ただご存知の通り、再生医療ビジネスは巨額な資金が必要で、100万円程度で治療できるようになるのは残念ながら当分先だろう(個人的主観だが)。とはいえ、幹細胞を用いた毛髪治療が現状どのステージにいるのか把握しておくことは、変なビジネスに騙されるのを防ぐためにも必要だと私は考える。

 

前置きが長くなったが、そんなわけで本日紹介する論文は2018年にBiomaterialsに掲載された論文で、横浜国立大学の福田先生らのご研究だ。タイトルは「Spontaneous hair follicle germ (HFG) formation in vitro, enabling the large-scale production of HFGs for regenerative medicine.(in vitroでの自発的な毛包幹細胞(HFG)形成は、再生医療のためのHFGs大量製造を可能にする)」である。HFGsを毛髪幹細胞と訳していいものか悩んだが、読者の方にイメージが伝わりやすいと思ったためこちらを使用させていただく。

 

毛髪再生は上皮性幹細胞と間葉性幹細胞の凝集体を作製して頭皮に移植するという方法が採用されるが、この工学的に作製されるHFGsは作製労力もコストも時間もかかるという課題を抱えていた。筆者らはこれを簡便かつ実用的な手法で作製できるよう、上皮性幹細胞と間葉性幹細胞が自発的に自己凝集するHFG chipを開発した。といっても自己凝集という原理自体は何ら新しいものではない。筆者らは組織工学的技術を用いて、96well plateなどの一般的な細胞培養プレートのウェルよりもはるかに小さいマイクロウェルをPDMS(ポリジメチルシロキサン)という酸素透過性シリコンによって作製し、そのマイクロウェル内に大量のHFGsを培養することに成功したという点だ。さらにそのHFGsはマウスに移植すれば正常に毛髪が生えてくるし、かつ1度きりではなく、i移植した箇所から毛髪が何度も生えてくることも確認している。これは毛髪治療を考える上で非常に嬉しい結果だ。ただ、今回の結果はマウス由来の細胞を用いているので、ヒト由来の細胞で同じことができるかどうかは今後の検討課題だと考える。

 

今回の論文を読んで読者の皆さんに改めてお伝えしたいことは、“再生医療”で毛髪治療を解決できる可能性は今後大いにあるが、それはまだまだ実現し得ないということだ。ヒト由来の細胞で成功するか検討するだけでも2~3年、それらを臨床試験に移行させるための品質維持などの検討に4~5年、臨床試験に10年と、大雑把に考えてみても15年以上はかかる。そこはしっかり理解していただきたい。残念ながら、こういった研究は進めば進むほど、マスコミに取り上げられるほど、“再生医療”という言葉の意味すら理解していない詐欺クリニックが「我々のクリニックでは再生治療による毛髪再生を世界に先駆けて成功しています!」といって宣伝したりするようになる。世界の研究者が躍起になって実現しようとしている再生医療を、ただのクリニックが世界に先駆けてビジネス化に成功するわけがない。毛髪に関して本気で悩んでいる方々を、騙す前提でビジネスにする輩が、この日本にも一定数存在することが実に腹立たしい。そういう輩がいるから、CiRAの山中先生のような素晴らしい再生医療研究者達が苦労することになる。

 

この記事を読んでくださった方々は、詐欺まがいな再生医療ビジネスを容赦なく糾弾するよう是非お願いしたい。それが日本の再生医療業界をより良くするし、この業界の推進に皆さんも貢献できることになるはずだ。

 

 

※最後まで読んでいただきありがとうございました。

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