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【論文5】OFETを用いたリン酸化タンパク質のラベルフリー検出

懲りずに本日もOFET検出系の論文を紹介する。前回紹介した時は「抗体フリーの検出系が必要だ」と書いたが、それを実現できるかもしれない記事がすでにあったため是非紹介したい。

 

今日紹介する論文は2016年掲載で、リン酸化タンパク質を電位変化で検出できる可能性を示したものでAnalytical Chemistryに掲載された。タイトルは「Antibody- and Label-Free Phosphoprotein Sensor Device Based on an Organic Transistor. (OFETに基づいた抗体、ラベルフリーリン酸化タンパク質のセンサーデバイス)」だ。タイトルが個人的にはドンピシャだったので読むことを決めたが、内容的には化学と電気科学が主だったので、それら化合物や電子回路の詳細説明は、申し訳ないが割愛させていただきたい。

 

さて、筆者らは私と同じく抗体やラベル化タンパク質での検出に疑問を抱いているようで、標的タンパク質と検出器のみでの検出を目指している。彼らの検出系は、リン酸化タンパク質と結合するZinc-dipicolylamineという正電荷化合物をOFET上にコーティングしてあり、そこにリン酸化タンパク質が結合することによって生じるOFET表面の電位変化を検出するというものだ。

 

被験タンパク質としてリン酸化α-カゼイン(牛乳に含まれる)を添加したところ予想通り電位変化が確認された。驚くべきことに添加から5分程度で検出が可能であった。検出限界は0.22ppmであった。抗体を用いたELISAでは0.05ppmが検出限界であるとのことで若干感度は低いが、抗体フリー、ラベルフリー、簡便かつ迅速、低コストであることを考慮すると十分使用に足るレベルだろう。

 

ただ、まだ選択性には課題ありと感じた。アルブミンやβガラクトシダーゼでは応答は確認されなかったが、非リン酸化α-カゼインで非特異的な電位変化を示した。非リン酸化といいながらα-カゼインはリン酸基が残存してしまっている場合もあるとのことで、それが応答の原因と筆者らは考察していた…うーむ。いずれにせよ血液中のリン酸化タンパク質を測定するとなった場合、様々なリン酸化タンパク質や血中遊離DNAを軒並み検出してしまう可能性があるということだ。

 

まあこの手の論文はとにかく選択性をある程度犠牲にしてでもPOCをまずしっかり取ることが重要であると考える。現時点では抗体レベルの完璧な選択性が無くても何の問題もない。今回OFETの抗体フリー、ラベルフリー検出の可能性を示せたので、あと必要になるのは、標的タンパク質を何に決定するかとそれを検出する化合物を何にするか、だろう。今後の進捗に期待したい。

 

余談だが、今回のような「バイオ」と「工学」を融合させたテーマにやっていると、必ずどちらかの分野“のみ”に精通した人間が次のような批判を投げかけてくる。例として、バイオのみに精通した方が投げかけてくる(と思われる)批判を一部紹介しよう。「抗体と比べて全然選択性が無いじゃないか!だったら抗体ELISAでいい!」、「原理は面白いけどいつになったら実現するの?いつ実現するかもわからないのにやってる意味あるの?」などなど。もしかしたら実際に聞かれたことがある方もいるのではないか。個人的にはそれらの批判は決して間違ってはいないと思うが、彼らはあることを求めすぎている。それは「今ある技術が抱える課題を、それは“完璧に”解決できる技術なのか?」ということだ。そんな技術はこれまでただ一つも開発されていないことを彼らは失念している 。完璧に解決できるものができたら、もうそれ以降の開発は一切する必要がないということだ。完璧なのだから。

 

ただしこの手の批判を受けた際に上記の反論をしたら無能の烙印を押されるので注意されたし。反論に必要なことは、「現存最高の競合技術」と比べて何が優れているのか明確にすることだ。コストなのか、感度なのか、選択性なのか、簡便さなのか、何でもいいから1つ現存最強の競合技術を破っていればよい。逆に言えば、現存最強を破れる要素が1つもなければその技術には価値がない。もちろん現存最強と比べて全てが劣っていたとしても、サイエンスとして新しいことを発見できる可能性は否定しない。ここで語るのはあくまで技術のみの話だ。

 

アカデミア研究者は自分たちが開発した技術が最高だと、特に競合技術リサーチもせずに強調しすぎだと感じる部分が多々ある(と言いながら自分もそうかもしれないが)。自分たちが凄いと思っている技術でも、企業から見たら数年前に興味が過ぎた技術かもしれない。今の日本では、独りよがりな研究は淘汰されていく運命にあると私は思う。ぜひアカデミア研究者はそういった技術リサーチにも力を入れてほしい。そのリサーチの一助に本ブログが役に立てば幸いである。

 

※最後まで読んでいただきありがとうございました。

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