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【論文4】有機電界効果トランジスタを用いた妊娠高血圧腎症バイオマーカ―の早期検出

“折り曲げたり丸めたりすることが可能な有機ELディスプレイ”に活用されている薄膜トランジスタ技術を皆さんはご存じだろうか?次世代の技術として存在自体は私も知っていたが、研究分野が違うということで全く調べてはいなかった。しかしそれがバイオ分野にも普及し始めているという事実を最近知り、バイオ一辺倒の研究者の方々(私もそうだが)にぜひ共有したいと思ったので紹介する。興味深いと思う研究領域なので、今後複数の論文を紹介していくつもりである。

 

今日紹介する論文は2014年掲載と少々古いものの、生物科学と電気科学を組み合わせて新たな可能性を示したもので、Advanced Materialsに掲載された。タイトルは「Electronic readout enzyme-linked immunosorbent assay with organic field-effect transistors as a preeclampsia prognostic. (妊娠高血圧腎症の診断で用いられるELISAのOFET化の検討)」だ。今回の論文では、このOFETがELISAに活用できるかを検討している。

 

OFETの原理は過去のジャーナルレビュー1)などを参照にしてもらった方が良いと思うので、私からの原理説明は割愛させていただく。要は「ポータブルで、作製容易で、高感度で、柔軟で、低コストで、低スケールで、薄膜な」トランジスタである。今回はインクジェットプリンタで作製された使い捨てのトランジスタセンサーを使用して、妊娠高血圧腎症という疾患で血中濃度が上昇することが知られているfms-like tyrosine kinase(Flt1), endoglin(Eng), leptinを検出できるかを調べている。

 

検出原理としては次の通りである。検出原理が変わっただけで、基本的なELISAの流れは変わらない。

  • コーティング剤(ポリイソインディゴ系ポリマー)をコートしたOFETを作製

※上記ポリマーはトランジスタを保護する役割を持つ。これでコートされたOFETは海中でも壊れないそうだ2)

  • 上記の標的タンパク質を認識できる抗体をコーティング(1次抗体)
  • 表面をウシ血清アルブミンでブロッキング
  • 標的タンパク質を認識させる
  • 標的タンパク質の異なる結合サイトを認識するビオチン付き抗体を加える(2次抗体)
  • ストレプトアビジン融合グルコースオキシダーゼ(GO)を添加
  • グルコースを添加し、GOによる酵素反応で生じるグルコン酸が引き起こすpH変化をトランジスタが検出

 

この原理で上記タンパク質の検出を試みたところ、例えばFlt1抗体がコーティングされたOFETではFlt1のみを検出してEng, leptinでは非特異的な検出は起こらなかった(厳密に言えば多少起きているかもしれないが、検出限界以下である)。Flt1の検出限界は1.25 ng/mLであり、1.25~10 ng/mLの濃度範囲では線形的に検出が可能であった。妊娠高血圧腎症患者の血中Flt1濃度は3.5-4.5 ng/mL程度とのことで、感度的にも及第点と言える。また、センサーの選択性を評価するため、上記タンパク質3種類混ぜた溶液やFBS中にFlt1を混ぜた溶液でも検出精度の減少や、非特異結合は起こらなかった。

 

これまで電気的手法を用いて標的タンパク質を検出する試みは腐るほど行われているようだが、今回この技術を個人的に興味深いと感じたのは、低コストかつ使い捨てが可能だという点だ。例えばスマホなどにこのOFETを装着できる小型装置を連動させることができれば、今後自宅でも簡便に疾患を検出できるようになっていくだろう。ただ、今回の検出原理では抗体を使用しているため、やはりコストが気になる。抗体を使うと確かに検出精度は上がるが、一気にセンサーとしての品質を担保することが難しくなるので、ぜひ抗体フリーの技術を開発してもらいたい。それが可能になれば、この技術は日本の医療業界を変える技術になると思う。

 

今の医療業界は根本的に人員が足りていない。高齢化が進み、癌や認知症などの患者が年々増える一方で、医者や看護師を目指す若者が減少しているためだ。もちろんこれは医学の道を志す人が減ったということを意味しているのではない。若者がそもそも日本から減っているのだ。これがどんどん進行すると、いずれ病院は高齢者だらけになる(今でもそうだが)。医療費も増加するし、若者が病気や怪我などで入院が必要になった際に「高齢者がいっぱいでもう入院できません」となっていくかもしれない。そうなってしまったらなおさら若者は高齢者を邪魔者扱いし、日本に嫌気が差して海外に逃げていくだろう。残念ながらそれをいくら嘆いても、この社会現象を止めるのはもう不可能である。ならば一つの解決策として、高齢者が自宅で自らの疾患状態を簡便に測り、かつ異常があった場合は自動で担当医に連絡が行く、というようなシステムの構築が急務であると私は考える。

 

<引用文献、参照情報>

1)  Henning Sirringhaus. 25th Anniversary Article: Organic Field-Effect Transistors: The Path Beyond Amorphous Silicon. Adv Mater. 26(9):1319-35 2014.

2)  Oren Knopfmacher., et al. Highly stable organic polymer field-effect transistor sensor for selective detection in the marine environment. Nat Commun. 5:2954. 2014

 

 

※最後まで読んでいただきありがとうございました。

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