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【論文3】薬剤候補になり得るGPCRの網羅的評価系の構築

ヒトは非嗅覚性GPCRを350種類程度もっているが、少なくともその1/3は内因性のリガンドが見つかっていない「orphan receptor」である。これらのreceptorはまさに新規薬剤開発へと繋がる宝の山であり、世界中の優秀な研究者が熱心に脱orphanを進めている。

 

脱orphanを達成する上で最も困難なことの一つは、そのorphan receptorがどのシグナル伝達系で活性化しているのか不明なことである。例えばGqタンパク質とorphan receptorがカップリングできる系を作ったとしても、実はGsタンパク質とカップリングするorphan receptorだったら、当然Gq評価系は意味を為さない。Gq, Gs, Gi, G12/13を全て評価すれば何か見えてくるかもしれないが、それらを全て実施するにはコストや時間がかかりすぎてしまう。仮に研究室に入りたての学生がもしそのテーマをゼロからやるとしたら、あっという間に3年は経ってしまいそうな負担量だ。

 

このような課題に対して有望な技術を提供したのが本日紹介する論文で、タイトルは「PRESTO-Tango as an open-source resource for interrogation of the druggable human GPCRome. (PRESTO-Tango:薬剤標的になり得るhuman GPCRを網羅的に評価するためのオープンソースリソース)」だ。2015年掲載と少々古いが勘弁していただきたい。

 

この系はβ-arrestin1)というGタンパク質非依存的にGPCRと相互作用してGPCRの細胞内取込を促進するタンパク質を使用したものだ。β-arrestinを使った評価系はBRET(bioluminescence resonance energy transfer)やHCS(high content screening)、Tango(Transcription activation following arrestin translocation)などが報告されているが、せいぜい数種類のGPCRを評価するだけに過ぎず、GPCRを網羅的に評価した例はなかった。ここまで読めば察する読者の方もいるかと思うが、今回の論文の肝は、TangoをベースとしたGPCR網羅的評価という“パワープレイ”を行ったということに尽きる。アカデミアでここまでのことをできるとは資金的に羨ましい限りだ。

 

話は逸れたが、筆者らはまず315種類のGPCR(non-orphan, orphanどちらも含む)を独自設計のプラスミド2)に組み込みHEK293T由来のHTLA cellに発現させている。その結果、96%のGPCRは膜上に発現することを確認した。さらにこのうちの75%は既存リガンドに応答した。応答したGPCRをクラスで分類するとクラスA(127/155:82%)、クラスB(8/14:57%)、クラスC(0/8:0%)であった。クラスCは残念ながら本評価系で検討することが難しいようだ。

 

それだけ?と思われるかもしれないが上記の内容が論文のメインだと私は思っている。後は既存リガンドで活性化したGPCRをアンタゴニストで阻害したり、384wellでこの評価系を実施できるようにしたりなど系のバリデーションが大半を占める。サイエンスとしての新規性は、これまでβ-Arrestinとの関与が報告されていないいくつかのGPCRが、β-Arrestinと相互作用することを示したことだろう。まさにこれはパワープレイの恩恵と言えよう。また、この評価系をオープンリソースとし公開したのも好印象だ。

 

脱orphanしたいGPCRに関する情報が全くないのであれば、まず1stステップとして本評価系を利用することは妥当であると考える。筆者らもその用途を考えているようだ。ただし強調しておきたいのは、これほどの評価系でも、当然全てのGPCRを評価できるわけではない。そもそもβ-Arrestinと相互作用しないGPCRもあるので、そこはどうしても割り切りが必要である。

 

今回の論文のように「できないことをできるようにする」論文はいつ見てもワクワクする。今後もこういう論文を目にしたらぜひ積極的に記事にしていきたい。

 

<引用文献、参照情報>

1)  Nabila Noor., et al. β-arrestin: a signaling molecule and potential therapeutic target for heart failure. J Mol Cell Cardiol. 51(4): 534–541. 2012.

2)  HA signal(膜上発現促進)―FLAG(タグ)―GPCR CDS―V2 tag(β-Arrestinのリクルートを促進)―TEV(TEVプロテアーゼ切断配列)―tTA(テトラサイクリンtransactivator)

 

 

※最後まで読んでいただきありがとうございました。

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