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【論文紹介15】有機電気化学トランジスタによるインフルエンザの高感度検出

 

【論文名】

Human influenza virus detection using sialyllactose-functionalized organic electrochemical transistors

シアリルラクトースを使用した有機電気化学トランジスタを用いたヒトインフルエンザウイルスの検出

 

【論文誌】

sensors and actuators B chemical (IF:5.401)

2018年掲載論文

 

【新規性】

  • 有機電気化学トランジスタ(OECT)を用いたデバイスでヒトインフルエンザウイルスが高感度検出できることを示したこと。
  • 既存のヒトインフルエンザウイルス検出よりも約100倍検出感度が高いデバイスを開発したこと

【将来性】

  • スマートフォンなどの機器とリンクすることで起動するデバイスの開発
  • 自宅で簡便に、かつ高精度にヒトインフルエンザウイルスの検出が可能になる社会の構築

【変革が望まれる分野】

  • 病院:自宅で検出して陽性だった場合、直接医師が診断しなくても「インフルエンザ」という診断を下せる制度の構築
  • 薬局:デジタル処方箋への移行。これができるようになれば、患者は病院に行かなくても薬局さえ行けば薬がもらえるようになる。

 

インフルエンザは日本で最も有名なウイルスの1つである。毎年必ず冬になるとインフルエンザのニュースが流れ、それをTVなどで観るたびに「ああ、もうそんな時期か気を付けないと」という気持ちになる。小さい子どもを育てている親御さん、受験シーズンの学生を育てている親御さんは非常にナーバスになる時期でもある。しかしあれだけ感染力の高いウイルスなので、たとえ予防のためワクチン接種をしたとしても完全には防ぎきれずに感染してしまうというのが現状であり、全くもって迷惑なウイルスである。

 

日本のとある企業ではインフルエンザに感染しても有休が取得できずフラフラになりながらも頑張って出社しなければならない方々がいるようだが、上司は一体何を考えているのか?といつも思う。ただでさえ体調が悪くて使い物にならない人間を強制的に出社させ、その通勤中に周囲の人間にウイルスをばらまかせ、しかも業務パフォーマンスが落ちていると怒り出すこともあるらしい。…本当に同じ人間だろうか?申し訳ないが頭がおかしいとしか言いようがないと思う。そういう人間に限って自分がその立場になるとすぐ休んで、その間の仕事を部下に振ったりするものだ。そんな企業がこの国に存在している限り、残念ながら「ブラック企業」という言葉は無くならないのだろう。悩ましい問題である。

 

また悲しいことに、一人暮らしの場合はインフルエンザに罹患して薬をもらうまで自分が頑張って病院に足を運ばなければならないケースが多い。そのためこの時期の内科、耳鼻咽喉科はインフルエンザウイルスの温床である。自分が罹患している側であればもはや感染しようがないので無敵なのだが、子どもの付き添いで来ている健康体の親御さんなどは悲惨だろう。健康体なのに子どもを病院に連れて行ったがために、自分もインフルエンザにかかってしまうという人が一定数いるはずだ。その二次感染を防ぐためにもできるだけ子どもを病院に連れていくのは避けたい、可能なら薬だけ欲しいという方はかなりいるのではないか…。

 

本当は自宅でインフルエンザかどうかを診断できるシステムがあれば良い。医師の直接診断・処方箋が無いと目的の薬がもらえないというのは、薬は人の命に関与するものなのでしょうがないといえばしょうがないが、冬に高熱を出した時点で誰もがインフルエンザを疑うはず。それがインフルエンザだろうが何だろうが私からしてみたら「診断はいいからとりあえずリレンザとか治る薬を出してくれ」という気持ちになるのも事実。わざわざ医者まで行くのも面倒くさいのだ。お金は払うから診断結果ではなく薬が欲しい。

 

というわけで今回紹介する論文は、将来的にそれを実現させてくれる可能性を示している論文である。東京医科歯科大学からの論文で、彼らはウェアラブルなヒトインフルエンザウイルス検出センサーの開発を目指している。

 

ヒトインフルエンザウイルスはその膜表面に抗原性糖たんぱく質であるヘマグルチニンを有しており、これが標的細胞表面にあるシアル酸を認識して細胞に結合する。筆者らはこの結合メカニズムに着目し、ヒトインフルエンザウイルスが結合できる2,6-sialyllactoseを検出ドメインとして利用したOECTを作製することで、簡便にヒトインフルエンザウイルスの検出ができるのではないと考えた。そこで、まず筆者らは以前に開発したoxylamineに富むポリマーをデバイス表面にコーティングし、ここにウイルスが結合できる2,6-sialyllactoseを結合させたデバイスを作製した。このOECTデバイスにウイルスが実際に結合するとデバイス表面の電荷が変化し、その変化を電流として捉えることができる。

 

演者らはまずこのデバイスの基本機能を種々の検討(SEMによるデバイス表面確認、電流量を変えた際の電圧変化、継続使用による劣化有無、最適なポリマーコーティング密度検討)で確認した。そして次にヒトインフルエンザAウイルスを実際に検出できるかを確認したところ、その検出限界は0.025HAU(赤血球凝集価:これが低い値で検出できるほどウイルス検出能が高いことを意味する)で、普段我々が使用しているインフルエンザウイルスA検出キットよりも2桁検出感度が高かった。これは素晴らしい結果だ。

 

また、2,6-sialyllactoseを2,3-sialyllactose(鳥インフルエンザが認識する)に変えたところ検出感度が低くなったことから、選択性に関してもある程度見れていると言ってもいいだろう。POC確認には十分すぎる結果だ。

 

今後はこのセンサーを使って診断するのに1回あたりどれくらいのコストを下げられるのか、鼻水などの夾雑液でも同様に検出可能か(今回は不活化したウイルスをPBSに混ぜた綺麗な溶液を使っていた)、どれくらいのウイルス変異体をこのセンサーで検出できるか、偽陽性/偽陰性はどれくらい起こり得るか、などをより詳細に追及できると「自宅での簡易インフルエンザ診断」への実現に向かうのではと考える。

 

繰り返すが、自宅でインフルエンザが診断できるというのは非常に魅力的である。患者としてはわざわざ病院にいかなくても薬をもらうことができるようになる。医者としても我々が自宅で検査した結果を電子媒体上で確認できるようになれば「あ、これはインフルですねー」とパネルをタッチするだけで一瞬で”診断完了”となる。これにより診断できる患者の数も増えるだろう。診断結果データさえあれば、医師は自宅でも片手間に患者を診断できるようになるかもしれない。家にいながらも診断料というお小遣いを稼ぎたい若手医師などはこのシステムを重宝するようになるかもしれない。また、診断料は薬局で薬をもらう際に一緒に請求できる制度にすれば、病院側としては別に患者が直接病院まで来なくても診断料を得ることができる。皆に利があるはずだ。是非こういったことが日本全国でできるようにしてほしい。

 

医療業界での使用を見据えた仮想通貨も現在は色々登場しているので(また後日紹介したいと思っている)、こういったものを使えばより患者情報などを扱いやすくなるはずだ。医療業界は新しいものを導入するのに時間と根気が必要であるため、まずは我々一般人の世論から変えていく必要があるだろう。自宅で診断できて薬をもらえるようになるということを良しとする私のような肯定派もいれば、「いや、やはりどんな病気かを直接診断してもらって、その病気に合わせた薬を直接もらいたい」という否定派もいるはずだ。どちらの意見が正しいというわけではないので絶対にこのシステムに刷新すべき!と主張するつもりは毛頭ないが、新しい医療の形として実現しても良いのではないかと個人的には期待している。昨今は在宅で治療を行う高齢者も増えているので、自宅で様々な疾患を診断できる技術は今後需要が増していくだろう。

 

※最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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