仮想通貨の全銘柄評価結果はこちら!
               

【論文紹介13】舌の苦味受容体は「良薬口に苦し」の理由を説明する

 

【論文名】

Bitter substances from plants used in traditional chinese medicine exert biased activation of human bitter taste receptors

伝統的な漢方に使用される植物中の苦味物質はヒト苦味受容体(TAS2Rs)の偏った活性化パターンを示す

 

【論文誌】

Chemical biology & Drug design (IF:2.396)

2017年掲載論文

 

【新規性】

  • 漢方の成分として使用される植物由来の化合物17種類が6種類のTAS2Rsを活性化することを発見したこと。
  • 漢方に含まれる化合物が活性化するTAS2Rsは様々な構造を持つ化合物に広く応答するものと、ある特定の構造に反応を示すものの2つに分類できる可能性を示したこと。

 

 

味覚の中でも「苦味」は、我々生物が口に入れたものが安全かどうかを推し量るためのセンサーとして機能する重要な感覚だ。この感覚はGPCRであるTAS2Rsが関与しており、これらのおかげで、生物は毒を持つ植物などを口に含んでしまった場合でも瞬時に吐き出すことが可能になる。このようなイメージから「苦味」は一般的に忌避、すなわち生体にとってマイナスなイメージを持っている方が多いと思う。

 

しかしコーヒーやお茶やビールなどはむしろその苦味が美味しさに寄与しており、これらの場合、苦味は良いものとして捉えられるケースも多い。また「良薬口に苦し」という格言にもあるように、苦さは薬の効き目を担保してくれる判断基準にもなる(今は苦味をマスクしてくれる技術も多く、そんなに薬を苦いと思うことは少なくなってきたが)。

 

今日紹介する文献は、まさにその「良薬口に苦し」の分子メカニズムを調べたものである。筆者らは漢方の苦味に興味を持っているらしく、その中に含まれる化合物は実際にどんなTAS2Rsを活性化させるのか?という発想から研究をスタートさせたようだ。

 

実験としてはとてもシンプルで、漢方に使用される“苦い”植物13種類から多様な構造を持つ26種の化合物を抽出し、ヒトTAS2Rsをどう活性化させるかを検討した。なお、ヒトTAS2Rsは全部で25種類あるらしい。口に入ってくる多様な毒物を識別するのに25種類しかなくて良いのか?とも思うが、この数がヒトの進化において適切だったのだろう。生物とは不思議なものである。

 

さて話はそれたが、検討の結果、筆者らはこれらの化合物のうち17種類(65.4%)がTAS2Rsに応答することを確認した。その中でもTAS2R14とTAS2R46は10種以上の化合物とブロードに反応したのに対し、TAS2R41とTAS2R50は1種類の化合物としか反応しなかった。また、これら17種類の化合物が活性化させたTAS2Rsは6種類であった。

 

文献の大まかな内容はこれだけだが、この論文を見て興味深いと思ったことが2つある。1つは、TAS2Rsを活性化させない化合物があったことである。苦味受容体を活性化させないということは、苦味に関与する別の受容体が存在するという意味だろうか?これが真実だとすれば大変興味深い。毒物を検出する機構は多ければ多いほど生物にとってはプラスに働くはずなので、その可能性は十分に考えられるだろう。ただし、あくまで今回の結果は細胞評価系での話なので、評価系が完全にヒトの応答性とリンクしているわけではないということも考慮しなければならない。もっと評価系の測定条件などを検討すれば、実は活性が見えてくるかもしれない。

 

もう1つはTASR2sの応答性の違いが大きく異なっていることである。ブロードに応答するTAS2Rsの役割と、ナローに応答するTAS2Rsはそれぞれ生物学的にどんな意味を持っているのだろう?生体にとって危険性の高い構造を有する化合物ほど特異的なTAS2Rsに反応するという傾向が実はあったりするのだろうか?

 

生物にとって「苦味」とはどういう意味を持つのだろう?今回の論文を読んで、研究者としてそんな疑問を抱かずにはいられない。味覚は我々にとって最も身近な感覚の一つだが、まだまだわかっていないことが多いようで大変興味深い研究領域だと感じた。専門外の研究領域だが、今後はもう少し味覚の方にも目を向けてみようと思わせる論文だった。

 

 

※最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 ブックマーク、コメント、読者登録、とても励みになります。

 これからもよろしくお願いいたします。