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【論文紹介12】in vivoでの細胞間相互作用を解析する新規手法(LIPSTIC法)

【論文名】

Monitoring T cell dendritic cell interactions in vivo by intracellular enzymatic labelling

細胞間酵素ラベリングによるin vivoでのT細胞-樹状細胞の相互作用モニタリング

 

【論文誌】

Nature (IF:40.137)

2018年掲載論文

 

【新規性】

  • in vivo内の細胞間相互作用を解析できる新規手法(Labeling Immune Partnerships by SorTagging Intercellular Contacts:LIPSTIC)を開発したこと
  • 蛍光タンパク質やエピトープタグと容易に融合可能なペプチドをラベリングタグとして使用できるSortaseA(SrtA)がin vivoでの細胞間相互作用解析に活用できることを示したこと
  • SrtAの機能部位に変異を入れることで細胞間相互作用ラベリングの起こりやすさを制御できることを示したこと。

細胞間相互作用の解析技術は、生物の複雑な機能性を把握するために必須の技術だ。例えば腫瘍内のがん細胞は自分の周りを取り囲む隣接細胞に影響を与え、自分が増殖しやすい環境を整えていることが最近の研究で報告されているが、この現象にも細胞間相互作用が大いに関与している。また、免疫反応も胚発生も神経応答伝達も細胞間相互作用が非常に重要で、近年では高解像度の顕微鏡などを活用することで細胞と細胞がタッチする瞬間を可視化できるようになってきている。

 

だが細胞と細胞がタッチする瞬間を捉えることはできつつあるものの、ではその細胞たちはなぜタッチし合うことができるのか?これはおそらく、ある細胞Aがもつ受容体Aと、ある細胞BがもつリガンドBが上手く結合し合っているからだと推察されているが、細胞―細胞よりもさらにミクロな世界であるリガンド―受容体の相互作用をin vivoリアルタイムに解析する技術はなかった。

 

筆者らは今回、細胞―細胞間のリガンド―受容体相互作用を解析する技術として、微生物がもつSortaseA(SrtA)というトランスペプチダーゼを活用したLIPSTICを開発した。SrtAはポリグリシン配列をもつタンパク質を認識して●-LPET配列(●は任意のアミノ酸、ペプチド、蛍光物質など)をその分子のN末端に付与する酵素である。

 

この技術のPOCを示すため、まず筆者らは膜たんぱく質CD40にペンタグリシン(G5)を融合させたタンパク質を発現するHEK293T細胞と、そのリガンドであるCD40LにSrtAを融合させたタンパク質を発現するHEK293T細胞を作製した。これらを混合した状態で基質であるビオチン-LPETGペプチドを加えたのちFACSで解析したところ、確かにCD40(G5)-HEK293Tにビオチンが付与されていることを確認した。この反応は膜たんぱく質の一つであるPDGFRとCD40の相互作用ではビオチン付与が起こらなかったことから、細胞間相互作用に関与するリガンド―受容体選択的にラベリングができることを示唆した。この付与はCD40-CD40Lの組み合わせだけでなく、CD28-CTLA4, PD-1-PD-L2, ICOS-ICOSL, NRX-NLGの組み合わせでも可能であることを示した。

 

ただしHEK293T細胞を用いたこの評価系はタンパク質が過剰発現している状態であるので、実際の生体内でも同様なことが起こるかはさらなる検討が必要である。そこで筆者らはT細胞にCD40L-SrtAを、樹状細胞にCD40-G5を発現するよう遺伝子組み換えしたマウスからT細胞と樹状細胞を単離し、エピトープで樹状細胞を活性化させた後にSrtA基質であるビオチン-LPETGペプチドとT細胞を混合したところ、先ほどと同様に付与が起こることがわかった。

 

最後に、in vivoでも付与が起こるかどうかを確認するため上記のような遺伝子組み換えマウスにエピトープを投与して樹状細胞を活性化し、一定時間後に基質であるビオチン-LPETGペプチドを投与して付与が起こるか確かめたところ、確かにT細胞にビオチンが付与されていることを見出した。さらにこの付与量は基質投与後の時間である程度制御できることから、エピトープで樹状細胞を活性化させてからどれくらいの時間でT細胞が相互作用しているのかをin vivoで定量化できることを示唆した。

 

内容としては大まかにこれくらいだが、実際に論文を読んでみてみると圧倒的な実験量であった。Nature, Cell, Scienceに掲載される論文はそれ一報の実験データで他のジャーナル何報分に相当するのだろうといつも思う。また、上記3誌に掲載されるには「既存技術ではわからなかったことを明らかにすること」が常に要求されるが、それ以外にも「誰が見ても驚くレベルの実験量」という要素も重要であると今回思い知らされた。

 

これら3誌クラスの論文を読むことは研究者として非常に勉強になる。今後も積極的にこれら3誌クラスの論文を紹介していけたらと思う。

 

 

※最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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