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【論文紹介10】焼いたハンバーガーに含まれる蛍光カーボンドット

「焼く」という行為は、我々が古来から絶えず実施してきた重要な調理工程の1つである。ただ、耳にしたことがある方も多いと思うが、その工程で生じる「焦げ」は生体にとって害を与えることが示唆されている。これは発ガン性が報告されているアクリルアミド、ベンゾピレン、ヘテロサイクリックアミンといった物質が加熱によって生じており、それを我々が摂取しているためである。

 

発ガン性という言葉を聞くと「じゃあ焼いたものを食べるなんて危険じゃないか!ガンになるぞ!そのような食材は規制すべき!」と声高に主張する方々がいる。だが、それは科学的根拠が欠けているから個人的にはやめたほうが良いと考える。日々の食生活に含まれる物質が生体に害を為す、というのは結局のところ過剰摂取が全ての元凶で、塩も砂糖も脂肪も、取り過ぎれば我々に牙をむける。塩と砂糖と脂肪はそれ自体に発ガン性はないはずだが、それらの過剰摂取による肥満や高血圧はガンを誘発するには十分すぎるファクターだ。

 

何が言いたいかというと、発ガン性などが気になっている物質・食品に関しては“自分で”その安全性を調べようということだ。世の中の情報にただ踊らされて、それで自分の食べたいものが食べられなくなってしまうのは、不幸以外の何物でもない。

 

そんな不確かな情報に踊らされないように、という願いを込めて今回は食の安全性に関するトピックを紹介する。タイトルは「Presence and formation of fluorescence carbon dots in a grilled hamburger (グリルしたハンバーガーでの蛍光炭素ドットの存在と形成)」で、中国の大連工業大学からの論文だ(2017年 Food & Function掲載)。

 

この論文を読んで初めて知ったが、加熱調理された食材の中には「Carbon dots(C-dots)」という炭素を主とするナノ粒子が形成されているらしい。これはクエン酸やエチレンジアミンを前駆体にして加熱生成するらしく、飲料やパン、未精製砂糖などに含まれることがこれまでに知られている。この物質が生体にとってどんな影響を与えているのかはまだcontroversialで、今回筆者らはグリルされたハンバーガーにもそれが含まれるかを検討した。

 

用意したパテを220℃、260℃、300℃という3条件でそれぞれ30分加熱し、それによってできたパテの成分抽出によりC-dotsが存在するかを評価した。その結果どの条件にもC-dotsが含まれることが明らかになり、粒形は220℃(Average 33.6nm) > 260℃(Ave:5.1nm) > 300℃(AVE:2.5nm)の順で大きさが変化した。また、生成したC-dotsが細胞に対して毒性を示すかどうかを検討するため、3条件の温度で加熱して生成したC-dotsをそれぞれマウス骨芽細胞に加えたところ、260℃と300℃で生成したC-dotsは細胞に対して毒性を示した(2割程度の細胞が死滅)。C-dotsが細胞に毒性を与えるメカニズムはこの論文では明らかにしていないが、C-dotsが細胞内に取り込まれることは確認されているため、細胞内でC-dotsが何らかの機能性を発揮しているのだろう。

 

と、この結果だけを見れば「C-dotsはヒトにも毒性を発揮する可能性があるのでは!?危険だ!」と考えるかもしれないが、それは早計である。そもそも毒性確認に用いたのはマウス由来の細胞であるため、ヒト由来の細胞で同様の結果になるかは未知数である。また、なぜ骨芽細胞を用いたのか記述がなく、たまたま毒性が確認された細胞のデータを出してきているのかもしれない。「実際に毒性も確認できているので、このC-dotsはアクリルアミドなどに次ぐ新しい毒性物質だ!」という主旨は、昨今のオーガニック市場を鑑みるに欧米あたりでは好んで採択されやすいと私は考えている。そのため、そのデータを示すためにこの筆者らはある意味で様々な検討を重ねたのかもしれない。

 

まあそれならそれで別に良いとして、不満なのは、この論文は我々が普段どれくらいのC-dotsを摂取しているのかという情報は一切示していない。毒性が出たと主張する量が本当に普段摂取する食事に含有されていることを示さないと、例えば「醤油1Lまるまる1本をヒトに注入したら死亡したので、醤油は規制するべき!」と同じレベルの暴論になりかねない。この論文で実際に言えることは「加熱調理したパテはC-dotsを含有する」くらいだろう。実際にC-dotsが毒性を発揮すると主張するなら、せめてマウスに摂取させた後にどんな影響が出るかという実験データくらい載せるべきだ。

 

最後に余談ではあるが、あらゆる食品に言えることとして、「絶対に安全な食品」などこの世界には存在しないということを皆さんには理解してほしい。最近は化学合成で作られた調味料を嫌がって天然から得られた調味料を好む風潮があるが、なぜ天然から取れてきた物質が安全だという発想になるのか個人的にはわかりかねる。天然由来の物質が安全ならボツリヌス毒素もフグ毒テトロドトキシンも安全という意味になるが…。この例を挙げると「それは毒物じゃないか!それとオーガニック食品を一緒にするな!」という意見を主張する人がいるが、そもそも毒物と食品の明確な違いは何だろうか?醤油だって塩だって砂糖だって量次第では人を殺せるし、何を以てそれらの物質を安全だと信じているのだろう?

 

天然から得られた調味料を選ぶ別の視点からの意見として、「化学合成で作られた物質が世の中に放出されたら、それらは分解されずに土壌に蓄積してしまう。それらが将来的に地球に対してどんな悪影響をもたらすかわからないから私は天然由来の調味料を使ってるんだ」というなら、それは全くもって同意である。確かにその懸念は間違いなくあり、実際すでに環境問題になりつつある。ただ、食の安全性とは全く関係ない視点からの意見のため、天然由来のものが安全であるということを全く証明できていないのであるが。食の安全性についてぜひ皆さんから忌憚ないコメントをいただければ幸いである。

 

※最後まで読んでいただきありがとうございました。

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