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【論文】膵臓は生体内の匂いを嗅いでインスリン分泌を調節する?

最近、味嗅覚に関与するGPCRが、舌や嗅上皮だけでなく全身で発現しているという報告が増えていることをご存知だろうか?例えば、腸内分泌細胞では味覚受容体(Taste receptors : TRs)を介してインスリン分泌が促進される。また、腎臓では嗅覚受容体(Olfactory receptors : ORs)を介して血圧が調節される。これらの例のように、TRs・ORsは味や匂いを識別する役割だけでなく、生理機能の調節にも関与しているというのが最近の流れだ。

 

本日紹介する東北大学を中心とするグループからの論文もその一つである。マウスやヒトの膵臓β細胞にORsが発現しており、それを活性化させると高血糖値が改善される可能性を示した研究でScientific Reports誌に掲載された。タイトルは「Olfactory receptors are expressed in pancreatic β-cells and promote glucose-stimulated insulin secretion(嗅覚受容体は膵臓β細胞に発現し、グルコース刺激性のインスリン分泌を促進する)」だ。

 

異所部位でのTRs・ORsの発現は、それらが最初に発見されてすぐに調べられ始めていたので、正直とっくに調べつくされていると思っていたが違ったようだ。筆者らは膵臓β細胞の研究をずっと行っているようで、膵臓β細胞の機能をより明らかにしたいという目的の一環でこの研究をスタートさせたのだろうと推察する。

 

この研究ではまず、マウス膵島とMIN6(マウス膵β細胞腫瘍化細胞株)でのマイクロアレイ解析を行い、少なくとも47種類のORsのmRNAが発現していることを見出している。それらの中でもORsの1つであるOlfr15はタンパク質として細胞膜上に発現していることも免疫蛍光染色で確認している。

 

このOlfr15は中鎖脂肪酸であるオクタン酸に応答することが元々知られているため、膵臓β細胞でもオクタン酸が応答するかどうかグルコース応答性インスリン分泌(GSIS)を評価したところ、高濃度のグルコース条件でのGSISが増強されることを見出した。この現象はOlfr15のノックダウンで抑制された。また、この現象は30 mMの塩化カリウムでは起こらなかった。

 

上記の結果から筆者らはオクタン酸で血糖調節ができるのではと考え、マウスにオクタン酸を経口投与した30分後にグルコースを腹腔内に注入した。その結果血漿グルコース濃度は有意に抑制された。ただしOlfr15 KOマウスでの結果はないので、本当に経口投与されたオクタン酸がOlfr15だけを活性化してグルコース濃度を抑制しているのかは今後検討すべきことだろう。

 

あとは膵臓β細胞のOlfr15がどのようなシグナル経路で活性化しているのかを調べている結果が続くので詳細は割愛するが、ORsを介して本当に血糖制御できるならそれはそれで興味深いことだと個人的には思う。ただしOlfr15が他のどの組織で発現しているのか、それら組織でのOlfr15はどんな機能を発揮し得るのかをしっかり調べなければ、このORを標的とした薬の開発はまだまだ難しいだろう。ちなみに素朴な疑問なのだが、匂い物質を経口投与する際にはかなりの匂いが発生していると思うのだが、仮にヒトに応用するとしたらどのように投与するのがいいのだろう?カプセル化は匂いを完全に封じ込めることができるのか?それとも治療と割り切るなら鼻をつまんで飲むのか?Olfr15がターゲットと決まれば別に揮発性の匂い物資でなくても他の不揮発性リガンドを探せばいいような気もする…うーむ。とにかく、興味深い論文だったので今後の研究を引き続き期待したい。

 

 

 

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